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第5回 職場訪問 安全衛生管理室
http://so.t.u-tokyo.ac.jp/ohkubo/anzen.htm

工学部5号館
工学部5号館
 今回も調整室準備委員会からの取材依頼で、5号館の安全管理衛生室にお邪魔しました。法人化によって安全衛生管理業務が非常に増えましたが、それらを一手に引き受けている安全衛生管理室とはどのような組織でしょうか。この取材でご紹介したいと思います。
情報センター(以下「情)」):まず安全衛生管理室設立の経緯をお願いします
土橋先生
土橋先生
 土橋先生(以下「土)」:工学部・工学系研究科ではかなり以前から放射線管理室を設け、防災、環境についてはそれぞれ委員会を設けて安全管理をしてきました。1999年に工学部・工学系研究科全体として放射線、防災、環境の三つを統括的に管理するために、安全管理室を立ち上げました。その後2004年度に法人化があり、労働安全衛生法への対応が必要となり安全だけでなく衛生管理も含めた管理をするため安全衛生管理室に名称を変更しました。この時、情報理工学系研究科も含めた範囲で管理を受け持つこととなり、工学系等 安全衛生管理室という名称となりました。


情)学内での安全衛生管理室(以下管理室)の位置付けはどのようなものですか
土)東大全学では、安全担当理事直轄の組織として環境安全本部があって、そこで東大全体の安全衛生管理を見ることになっています。その下に各部局の管理室があり、その一つが工学系等の管理室です。

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情)環境安全本部はどのような構成で運営されていますか
安全衛生管理室プレート
安全衛生管理室プレート
土)環境安全本部は教員と職員で構成されていて、全体の人数は20数名ほどでしょうか。安全管理の重要性が理解され、専任の教職員が増員されており、現在では10名程専任がおります。
情)工学系の安全管理はどのような原則でおこなわれていますか
安全衛生管理室内
安全衛生管理室内
土)安全管理は管理室が全てやると誤解されがちですが、基本的には現場の責任者、つまり研究の責任を持つ者が安全管理を主導することになります。例えば、研究でこういう危険な物質を扱います、こういう装置を使います、そういうことを決める方が研究の安全を確保する責任があるわけです。会社では、上から工場長、部長、課長、グループ長、研究者というように指揮命令系統も責任体制も決まっています。人の命にかかわることですから、非常に厳格におこなわれています。大学ではそれほど組織が明確ではありませんが、研究科長、専攻長、研究室の責任者、スタッフ、それから学生という組織になっています。指揮命令系統とまではいえないのかも知れませんが、この組織で責任を持つことになっています。


情)管理室の業務範囲はどうなっていますか
土)安全管理を現場だけで漏れなくやるということになると、なかなかうまく回りませんので、それをサポートするのが基本的な管理室の仕事ということになります。ホントは研究室サイドで相談に来るようなスタンスが良いのですが、そこまでみなさん意識が高まるにはかなり時間がかかりますので、管理室で指導したり巡視したりするのが現在の基本的な業務ということになります。

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情)法律に則って安全管理をおこなうわけですね
土)関係法令がありますので、それを守って頂くよう目配りをすることがまず第一に必要となります。特に労働安全衛生法は、様々な届け出や点検が義務づけられていますので、これらを間違いなく実行してもらう。そういう体制を作らなければいけないということです。また法令等の関係での、行政等外部との窓口として、学内の管理状況を統括する仕事も管理室は担っています。

情)工学系の安全管理組織はどうなっていますか
安全管理委員会
安全管理委員会
土)研究科長の下、全体方針を決定する総合安全管理委員会が設置されており、年1回開催しています。その下に安全管理委員会があって、年に2、3回開かれています。こちらは具体的な安全管理の内容を審議します。その下に安全管理体制整備WGとか、不明薬品の処理とか、特殊材料ガス管理などの専門委員会があります。これらを事務局的に運営していくのが安全衛生管理室ということになっております。

情)安全管理にはどのような種類があるのでしょうか
土)管理室の仕事を分類すると、防火防災、環境安全、放射線安全、そんな切り分けができるかなと思います。法人化後非常に内容が増えております。具体的には化学実験・薬品の安全、機械の安全、電気の安全、特殊装置の安全、環境安全、排水管理、放射線管理などです。職場の環境を保持するため、作業環境測定や事務所の環境測定等の実施も統括しております。

情) 環境安全に関してはいかがですか
土)環境安全については、全学の環境安全研究センターが主導しています。具体的には薬品管理とか排水管理です。排水が基準濃度を超えますと、行政側の措置として最悪では水道の使用停止命令が出せる権限があります。ですから公共下水道に出す前に学内のマスで測って排水基準違反に対処しています。工学部は広いのでで排出源を特定するのは非常に困難です。

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情) 薬品や放射線に関してはいかがですか
研削砥石講習会
研削砥石講習会
土)薬品は様々な法律の規制を受け、法令に準拠した綿密な管理をしなければなりません。最近、コンピュータを用いた薬品管理システムを導入しましたので、それを用いて管理していただくようお願いしています。放射線の管理は、法令で細かいところまで管理事項が要求されていますので、使用する場合は登録して教育を受けてもらっています。ものによっては被爆量をモニターして記録を残すということもおこなっています。

情) 管理室はどのようなスタッフで運営していますか
土)3月までは応用化学の北森教授が室長をしておられましたが、4月からは機械の中尾教授が室長です。私が副室長で防災と環境安全を担当し、それから野村助教授が放射線関係と環境安全を担当しています。あと大久保技術職員。事務系からは総務の山口主査(4月より新倉さんに引き継ぎ)、施設の荒井主査と山田さん(4月より水谷係長も担当に追加)に入ってもらっています。それから有期雇用の室員が6名おります。

情) 専攻の対応はどうですか
土)安全担当の委員ということで、各専攻から専攻代表委員、号館ごとに号館代表委員を出してもらい、それぞれの取りまとめをお願いしています。委員には、委員会やミーティングには出てもらいます。委員の人の担当できる業務には限りがありますので、ジョブマッチングで技術職員の方に来ていただければ、専門知識を生かしてやっていただくところがたくさんある状況です。

情) 安全管理業務はどのように実施していますか
土)管理業務の一つの流れとして、まず教育をして意識を高めていくという部分。それから自主点検、月一回くらいは安全の点検を自分でして下さいということをお願いしています。それから巡視をして安全上の問題を指摘して改善してもらっています。巡視は、産業医の方と一年間12回で工学部全体を回るようにしています。節目ごとに委員会やWG等で問題点や課題を審議して次の管理の目標設定に活かすという流れになっております。

情)事故の資料を見せていただきましたが、事故は多いのですか
地震訓練
地震訓練
土)事故の未然防止をするのが管理の基本ですが、残念ながらやはり事故はあります。数が増えてきているというのは、実際の事故が増えたというよりも、事故を報告するということが徹底してきたのかなと思います。また、事故が起きた場合の対応をする、というのも我々の仕事になります。

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情)事故報告はどのようにしていますか
土)事故が発生した場合は、必ず届けを出すことになっています。事故報告に対して労働基準監督署はきびしいです。法人化後は、事故の内容によっては労基署に報告する義務がありますので、必ず管理室に報告してもらうことになっています。資料に昨年度の事故・トラブルの報告が入っていますが、こういう様々なものにも対応していかなければなりません。目標としては事故がなくなるように未然の管理をするということになりますが、大きな組織ですのでいろいろなことが起きます。そういう意味では気を抜けません。

情)その他の届け出業務も多いのですか
土)事故がなくても公官庁等へいろいろな届け出をします。例えばクレーンを設置するのであれば、管理室が届け出の窓口になりますし、放射線関係でも届け出があります。逆に公官庁側から査察に来れば、その対応もします。

情)組織は大分整備されたようですが、全体の安全意識がまだ低いように感じますが
土)会社の場合は事故のリスクは大きく、操業停止になると何億という損害が発生しますので、安全への意識は高く、安全管理は厳しくやられています。大学ではまだそのような意識が低いため、意識を高める教育をおこなっています。事故があった時は、専攻長会議や教授会でも説明しています。さらに現場側から意識を高める活動も必要です。講習会とか巡視に行って個別指導しながらやっています。それから安全確保の体制を整備するという意味で、地震訓練、消防訓練、講演会とか講習会も開いています。全体の安全意識を高めるには、特別なことをやるというよりは、地道な活動を継続していくのが良いかなと考えています。

情)法人化の前と後で意識が変わりましたか
産業医巡視
産業医巡視
土)だいぶ違ってきていると思います。ご存知だと思いますが、昨年7月に農学部で潜水作業中の方が亡くなるという事故がありました。労基署による調査がおこなわれ担当の先生と、法人として東京大学が送検されましたので、安全管理の責任を身近なこととして認識しつつあると思います。国立大学時代は後ろ盾として文科省と国がいました。人事院の安全関係の規則に罰則がはっきり書いてありませんでしたし、細かく指導されれたり送検されるということは現実にはありませんでした。このような状況変化が意識の変化につながっていると思います。

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情)事故報告はデータベースになっているのですか?
土)事故報告は全学的に集計されて折に触れて情報提供されております。集計して類似した事故をまとめて再発防止に活かす取り組みも検討されています。始めた頃は報告は少なかったのですが、現在はヒヤリハット(未然事故)も含めると全学で週に数件発生しており、1日に1件位起きているような感じです。

情)どのような仕事を技術職員に期待しますか
土)専門知識や経験を持っている技術職員もおられるので、アドバイザーという形でいろいろ指導していただくと助かります。月一回の巡視も非常に部屋数も多いですし、十分には見て回れないのが実情ですので、専門知識がある方にもう少し細かく見ていただいて日常的に指導していけば、かなり安全環境が良くなるのではないかと思います。法人化後に安全衛生管理の重要性は内外から高まっています。このあたりに興味がある、専門知識をお持ちの方には経験を生かしたやりがいのある仕事になるのではないかと思います。

情)工学系の安全管理を理想的に実施するには何人位のスタッフが必要ですか
工学部5号館
工学部5号館
土)難しいですね。やろうと思えばいくらでもやることが出てくるんです。ホントは研究室とか、専攻側がそういう組織を作って、それをリンクしていくという方法もあるかと思うんですが・・・。やるべきことはたくさんありますので何人とは言い難いですが、今の10倍の人数になっても仕事はあると思います。

情)技術部と技術部ホームページに期待することがありましたら
土)工学系等は非常に組織が大きいので、かなり広く根を張った活動を継続的にやっていかなければ安全確保が難しいので、多くの委員に出ていただいています。しかし任期で交代する委員だけでなく、継続的に見ていただけるとかなり充実するのではないかと期待しております。HPに関しては、同じように大きな組織ですから意識を統一化するとか、情報を共有化する、ということが多くの場面で重要になりますので、そういった意味で大きな役割を担っていると思います。
--------土橋先生が会合のため退席----------

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情)管理室での仕事内容はどのようなものですか
大久保氏
大久保氏
大久保氏(以下「大)」:管理室の仕事は3つに分かれていますが、私が以前は田無の原子核研究所におりました関係で、放射線関係を担当しています。工学部の主任者(放射線)にもなっております。その他には安全パトロールとか、巡視とかを月一回おこなっておりますし、あと地震訓練とか、いろいろやっています。
情)放射線がご専門ですが、管理室の仕事全般を行うのはハードですね
環境測定
環境測定
大)細かくやるときりがありませんし、できないことも多いです。常勤は私一人なので、非常勤の方には放射性以外のところを手伝ってもらっています。放射線に関しては私が指導、管理等を全般的に見ております。使用記録等を現場の責任者と担当者に報告していただいて、こちらで管理しております。

情)安全衛生管理室のアピールを。
大)地味で大変な仕事ですが、一緒にがんばりましょう。

情)本日はありがとうございました。

安全衛生管理室の業務説明(学内専用 PDF形式ファイル)

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インタビュアー感想
 
  • 工学系研究科の安全業務を担っている大事な部署としては小規模な職場だという印象でした。スタッフも少数なので、工学系としてもっとバックアップする必要があると感じましたし、自分の職場もご迷惑をおかけしないようにしようと思いました。

  • 地味な仕事とおっしゃっていましたが,とても重要なポジションと思います。研究室でも大変お世話になっております。今後は心して研究室の安全管理に努めます

  • 独立行政法人化後,全学的に安全に対する関心が高まっていますので,実験や作業に直接携わる我々の意識を今まで以上に啓発していただきたいと思います.

2006年3月30日 安全衛生管理室にて収録
インタビューアー 山内 川手 小林 畠山

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