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第3回 職場訪問 バリアフリー支援室(駒場Uキャンパス)

先端科学技術研究センター 3号館
先端科学技術研究センター
3号館
 工学系の技術職員は4月から技術部所属となり、学内の多様な組織と連携する道が開かれました。今回は技術部ホームページ初の工学系研究科以外への取材として、学内で障害者の支援を担当しているバリアフリー支援室へうかがいました。この特集では障害者の支援という視点から、大学の業務を見直してみたいと思います。

バリアフリー支援室
インタビュアー(以下I):インタビューを受けていただくスタッフのご紹介からはじめたいと思います。
伊藤氏・中津氏
伊藤氏・中津氏
 本日の取材は伊藤と中津が対応させていただきます。まずわたくし伊藤聡知から自己紹介したいと思います。私は茨城県で生まれ福島県で育ちました。東京外国語大学を卒業後、筑波大学大学院で障害児教育を専攻し、東京都視覚障害者生活支援センター職員、福島県立盲学校教員、日本障害者リハビリテーション協会国際部研修課職員を経て、2002年10月に東京大学バリアフリー支援準備室の設立時に着任しました。視覚障害が専門です。
 中津真美と申します。2005年5月に採用されました。主に聴覚障害を担当しています。東大に来るまでは、神奈川の高校や都内の予備校で、障害を持った生徒の支援に携わっていました。

I:まず支援室の沿革から伺いたいと思います。
 東京大学では2001年に宮島洋副学長が座長となってワーキンググループが設置され、「バリアフリーの東京大学」を目指した取り組みが始まりました。ワーキンググループ報告書に、バリアフリー支援室(以下支援室)を設置することが記載され、2002年10月に支援準備室としてスタートしました。その後2004年の4月にバリアフリー支援室として正式発足し、同時に障害者法定雇用率2.1%を達成するため、人事部との連携という新しいミッションも付与されました。
バリアフリー支援室ホームページ

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I:支援室ができる前の支援体制はどうだったのでしょうか。
バリアフリー支援室内
バリアフリー支援室内
 支援準備室設立以前は全て各部局が支援を行っていました。そのためため障害を持った学生の卒業とともに支援のノウハウが散逸してしまい、学内での均質な支援サービスやノウハウの蓄積は非常に困難でした。支援室の設立後は東京大学総長名で出された支援実施要項に基づいて、円滑な支援ができるようになりました。もちろん支援の実施には各部局の支援実施担当者の協力をいただいています。

I:工学部にも支援実施担当者(以下担当者)はいますか。
受付
受付
 工学系研究科においても支援実施担当者が選任され、積極的に対応していただいています。東京大学は規模も大きくキャンパスも離れていますので、部局の協力が不可欠です。障害をもった学生の支援にはいろいろな方の協力が必要です。支援室だけではなく、教職員、学生との三位一体の協力体制を整えることによって、はじめて均質で円滑な支援を実現することができるのです。支援室が先端研にあるため本郷地区の方にはご不便をおかけしていますが、平成18年4月1日に、支援室本郷支所が開かれることになりました。

I:支援室はどのような体制で業務をおこなっていますか。
録音図書制作室・対面朗読室・面談室
録音図書制作室・対面朗読室・面談室
 支援室には室長である濱田理事・副学長のもと全学の各分野のスタッフ19名のバリアフリー支援室員によって構成され、バリアフリー支援室会議で全体の運営を行なっています。また、それとは別に、3名の職員が支援室に常駐し、障害をもった学生・教職員の窓口となっています。支援室は、当初本郷地区にできる予定だったのですが、先端研にバリアフリープロジェクトという研究グループがあり、連携・協力する上で相乗効果が期待されるため、先端研にできました。

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I:障害者といってもいろいろな方がいらっしゃると思いますが。
点字プリンタ
点字プリンタ
 その通りです、障害には視覚障害、聴覚障害、精神障害、肢体不自由などいろいろな障害がありますので、障害に応じてきめ細やかな対応が必要です。外からは見えない障害で苦しんでいる方もおられますので、休憩室などの設備も含めた充分な支援が必要です。支援室では障害をもった方からの希望に可能な限り応えられる体制を整えておりますので、支援が必要な方は遠慮無くご相談ください。東京大学における障害をもった学生・教職員の支援実施要項と業務内容を、支援室のホームページに掲載しておりますので、是非ご覧いただきたいと思います。

I:支援によって障害者はどのような活動が可能になりますか。
 障害者は、物理的・制度的な保障と人的支援サービスがあれば、健常者とほぼ変わらない活動が可能です。例えば建物にエレベーターを整備するとか、ノートを取るのにICレコーダーの使用を許可するとか、障害者用トイレを用意するなど大学側の適切な支援と関係者の認識が得られれば、障害者の教育環境は180度変わると思います。障害者支援は奨学金や宿舎を提供するのと同様、大学として用意しなければならない当然のサービスとお考えください。

I:技術職員の専門技術を支援に生かすことはできますか。
 私どもでは部局の事情に合わせた支援をおこなっています。今回技術職員の方のお話をお聞きして、工学系では技術職員も含めた四位一体とも言うべき体制が必要なのではないかと強く感じました。教育・研究で、機械や物を扱うという特殊性がありますので、技術職員の方の専門技術を生かしていただければ、より質の高いサービスを提供できるのではないかと思います。是非そのような体制を新しくできる技術部で整えていただければと思います。

I:東大の支援はどの位のレベルにあるのですか。
点字ディスプレイ
点字ディスプレイ
 朝日新聞の日本大学ランキングで障害者支援の項目を見ると、常に上位にあるのは、広島大学と日本福祉大学です。東大は2005年にやっとベスト5入りしたところです。世界的レベルと比較すると東京大学のバリアフリー化はまだまだ遅れています。施設的にも障害者利用を考慮していない場所が多いですし、障害を持った学生の数も、今より一桁以上多く在籍していても不思議ではありません。日本の大学・短大で、専門のスタッフを揃えた支援をおこなっているところはまだまだ非常に少ないです。東京大学のバリアフリー化が、他の大学の見本になることができるよう、精一杯がんばります。

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I:本郷キャンパスは古い建物が多いので問題がありそうですが。
 工学部に全盲の学生さんがいるので本郷にも良く行きますが、車椅子で教室まで行けなかったり、点字ブロックが水没したり、点字ブロック上の駐輪・駐車など多くの問題があります。現在、全学の障害者用トイレや点字ブロックなどを載せたバリアフリーマップを整備中です。工学部でも是非、建物内部のバリアまで網羅したバリアフリーマップを整備して、ホームページに掲載していただきたいと思います。

I:今後の抱負などありましたらお伺いしたいと思います。
先端研3号館ロビー
先端研3号館ロビー
 東京大学のバリアフリーを将来日本を代表するようなものにするのが私の夢です。そして、日本全国の大学・短大で障害学生支援が普通に行われるような社会になることを切に願っています。皆様のご協力を得て是非実現したいと思います。

I:最後に技術部ホームページへの要望をお伺いしたいと思います。
 技術部ホームページへの要望ですが、まず視覚障害者がHPを閲覧するためのソフトがありますので、それに対応しているかどうかチェックさせていただきます。特殊なソフトを使って作成すると読めない場合があります。例えばPDFでも、読める物とそうでない物がありますので、是非チェックさせてください。これは作成時に少し気を付けていただければクリアできます。

I:本日はお忙しいところありがとうございました。

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インタビュアー感想
 
  • 以前、骨折して不自由な思いをした経験があるので、障害者の支援には関心がありました。今回の取材でスタッフの方の問題意識や使命感をお聞きして、障害者支援の明るい未来に確信を持つことができました。ただし明るい未来は黙って手に入るものではなく、関係者の理解と努力が必要であることは言うまでもありません。技術職員として微力ながら障害者の支援にお役に立ちたいと感じた一日でした。

  • 支援室スタッフの熱意と共に親しみやすいお人柄を拝見し,障害を持っている方々が気軽に相談できる雰囲気があると感じた.
    また,「障害は我々が作っている」という言葉に認識を改めさせられた.健常者が作り上げた障壁を取り去る作業こそがバリアフリーであるという考えを念頭に置いて,学内を見直してみてはいかがでしょうか.

2005年12月8日
バリアフリー支援室(駒場Uキャンパス)にて収録
インタビューアー 山内 畠山

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