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大角氏は鹿児島大学にお勤めの技術職員で、大学の技術職員に関する研究では日本の第一人者のお一人です。今年度の工学部・工学系研究科技術発表会で、技術職員に関するパネルディスカッションが開催されますが、大角氏もゲストパネラー出席されることが決定しています。大角氏と当センターの交流は、当HPのサーバであるWeb Parkの不備を、大角氏にご指摘いただいたことからはじまりました。その中で大角氏が全国の大学を調査され、技術職員情報を精力的に収集しておられることが分かりました。今回の企画でご紹介する資料も、大角氏が2005年度熊本大学技術発表会で発表された報告原稿です。技術部を考える上で参考にすべきデータが掲載されていますので是非ご覧ください。今回、大角氏が東北と関東の大学・研究所技術部の調査にいらっしゃるとお伺いしましたので、大角氏ともうひとつのゲストパネラーの依頼先である、高エネルギー加速器研究機構を取材しました。大角氏には、調査先のつくばで貴重なお時間を割いていただきました。取材にご協力いただきありがとうございました。
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鹿児島大学・大角氏 |
インタビュー風景 |
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大角氏とはKEK訪問直前に合流した。メールでのやりとりのおかげで、対面数分後には旧知の間柄のように技術職員の話題に入れた。短時間ではあったが、全国の大学と東大における技術職員問題についてお話を伺うことができた。お話の中で、東大内の事情を良くご存知なのには驚かされた。以下は大角氏のお話の内容をまとめたものである。
- 日本の科学技術をどうするのかという立場から考えないと、技術部は社会的に認知されない
- 技術職員数が少なくなってしまった大学では、組織化や認知を要求・確立するのは難しい
- 東大は技術職員の絶対数はまだ多いが、減少率は他大学よりも大きい
- 東大の技術職員は外に対しての情報発信が少ない
- 熊本・東北大学など大学内で技術部が確立されて活動しているところがいくつかある
- 組織運営は重要情報の偏在をなくさないと破綻する
- 充分な準備と理解なしに評価を導入すると全体のモチベーションが下がる
- 組織運営のノウハウと人材がないので、完全な組織化には緩やかな移行が必要(10年程度)
- 技術部に業務依頼があるのは幸せであると考えなければならない
- 東大は日本をリードするべき立場にあるので、模範的な技術部をつくって欲しい
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インタビュアー感想
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- インタビュアーA
多くの実地調査とデータに基づいた大角氏のご意見は非常に説得力がある。我々東大の技術職員間の議論でも同様の意見は出るが、バックグラウンドとなるデータの裏付けがなく、自分の周囲の状況から判断せざるを得ないため、独善的な議論になりがちで説得力に欠けることが多い。そのため議論が中々大きな流れにならなかったと思う。他大学でのこれまでの実績や反省点に真摯に耳を傾け、今後の技術部運営に反映させることが必要であると感じた。
- インタビュアーB
ホテルのロビーでの大角氏との対談では、他大学の大学技術部についていろいろな情報を得ることができた。大角氏はご自分が所属する鹿児島大学の現状や熊本大学、早稲田大学の状況を説明しつつ、「東大が先頭を走っていない状況は残念であり、社会的にも影響力がある東大に是非頑張ってもらいたい」と少々の不満を込めた激励を口にされていた。「東大に頑張ってもらわないと日本の大学はどうなるのか」という言葉には、東大に働く我々がそれを意識しなくてもその影響力が大きいこと、また、その重みのようなものが感じられた。
大角氏の考え方は、技術職員一人一人が常に自分を高めようとする意識を持つことが必要であり、その集合が真に独立した技術部を形成する、ということである。まさにその通りだと思う。各個人が自分自身を向上させることがやがては技術部全体のステータスを上げることになり、それが社会的にも認められた技術部につながっていくのだと思う。この取材をとおして大角氏の技術部に対する前向きな姿勢やこれまでの努力を知ることができた。物静かな印象とは裏腹に、あのようなバイタリティがどこから湧き出てくるのかと感心させられるとともに、東大に対する期待に答えられていないことに少々引け目を感じたことも事実である。本年9月に開催される技術発表会にパネリストとして参加されるので、そこでの発言が楽しみである。
- インタビュアーC
物事を客観的な目で見るという行為は、中にいる人間にはできないことである。そして、客観的に判断し意見を伺う、という行為はなかなか貴重なものではないか、と思うのである。(たいていは意見を言ってくれない場合が多く、意見を言われても無駄にしてしまう場合が次に多い)。鹿児島大学・大角氏には東大工学部・技術部を客観的な目で見て、意見を言っていただいた。今後の東大工学部・技術部形成に貴重な方であると思う。今回お会いでき、お話を伺えたことは有意義であったし、自分の今後の働き方についても刺激になったと思う。技術部の皆さんにも是非お話を聞いていただき、この貴重な一件を無駄にしないよう、考えたいものである。
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2006年6月 |
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インタビュアー 山内, 川手, 小林 |
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