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第8回 名古屋大学総合技術研究会参加報告

 第8回特集は技術部公募により3月1日〜2日に開催された名古屋大学総合技術研究会へ派遣された方の投稿です。この報告で参加できなかった方にも総合技術研究会の雰囲気をお伝えできればと思います。報告依頼に応じて快く寄稿して下さった精密機械工学専攻の碇山技術専門職員には、この場をお借りして御礼を申し上げます。

平成18年度名古屋大学総合技術研究会に参加して
精密機械工学専攻 碇山みち子

 今回の総合技術研究会は参加者756名、口頭発表175件、ポスターセッション133件と過去最高の発表件数(参加人数)だった。最初に平野眞一総長の特別講演が行われた。名古屋大学はトヨタをはじめとする企業や中小企業などに支えられ、ものづくりができる環境に置かれている。ものづくりを支えるという点で技術部に期待しているというお話であった。その後8(11)のセッション、11会場に分かれて、発表が行われた。IB電子情報館は各机にコンセントが設置され、電源の心配をすることなくPCが使用できるため非常に便利であった。特別講演と参加したセッションだけであるが、発表内容・質疑と感想を報告する。

<特別講演>
ものづくりと材料イノベーションに想う
名古屋大学総長  平野眞一
平野総長の特別講演
平野総長の特別講演
 「ものづくりは人づくりであり、又人づくりはものづくりの基礎である」といく信条に基いて、ものづくりは理科系出身者が中心的役割を果たしていく必要がある。小学生の理科離れに対しては、理科が好きな方に小学校の教員になって欲しい。
 昔は、理科の時間が沢山のあったが、今は実験をせずに教科書で結論だけを教えている。資源のないわが国は知を尊重し、科学技術創造立国になることが求められている。「知的向上、好奇心の醸成」が失われていることが心配、その問題解決の糸口として「正しい教育の実践」があげられる。理系で本当に良かったといえる環境をつくりたい。科学技術が悪者になっていることも否めない。影の部分をなくす努力をしていかなくてはならない。
 ものづくりをする人の環境を整える必要がある。オンリーワンにならないと世界からたたかれていく。最近は短期決戦で製品化する方向になっている。例えばある自動車会社では、突然、外国から資本がきたり、組み立て部門が海外に移転したりと、崩壊が起こっている。研究は0から1へ立ち上げる所で非常に時間がかかる。このバックボーンを支えて来られたのが技術部の方々である。学生に知識を知恵として蓄えてあげることが必要である。名古屋地域は多くの工場を抱えていて、ものづくりの基盤がある。それを企業の方々が大切だと思っておられるので、名古屋大学は恵まれている。
 総合知識と専門知識をもった人々をつくらないといけない。I型とT型をつくらないといけない。自分のやってきた技術を人に説明できる人も作らないといけない。環境を犯さず、自然界に学びながら材料を作ってきた。ものづくりは人づくりであるから技術部の方々の発展を期待したい。

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<口頭発表>

1.ものづくり教育における3次元データの利用について
西村世志人(山口大学 工学部 ものづくり創成センター)
発表会場
発表会場
 3次元データの編集、作成のために溶解造形機、3次元スキャンソフトウエアなどを購入し「造形ものづくり教育維新プロジェクト」で自ら解を導き出す演習を行っている。創造的に解決するための発想法や、第3者に的確に伝えるための技法を用いて、発想法で解決した成果を表現させている。「できた3次元CADモデルに拘束条件をつけて、モデルが動くようになっているか」と質問したところ、「まだそこまでは指導していない。部品と部品を結びつける所までしか指導していない」という回答であった。

2.溶接シュミュレーションと実習体験が融合する溶接実習教育の確立
石塚和則(釧路高専 機械工学科)
 CADとCAEとCAMを取り入れ、力学系、設計製図系、溶接実験、切削加工まで含めたカリキュラムで教育している。発表者は3年次に溶接を担当し、内部評価においてCAE解析を取り入れ発表していた。「CAE解析において、メッシュをきるところが難しいのですが、そこはどのように指導していますか?」という質問に「有限要素法に詳しい教授がおられるので、その方が指導されています」という回答だった。高専などでは実験、演習は教授、助教授の先生方と一緒に取り組んでおられることが解った。東大の場合は技術職員一人で演習を担当する事が多く、学生の質問などに技術職員が対応しなければならないので、高専とは実験、演習に対する取り組みが違うと思った。

3.医療画像を用いたシュミュレーション支援システムの開発
高橋一郎(名古屋大学情報連携基盤センター)
口頭発表の様子
口頭発表の様子
 生体データに対するシュミュレーションが盛んに行われて、実際の医療現場で役立てていく研究が行われている。そこで、CTやMRIなどの医用画像をもとにボリュームデータを生成・加工し、解析に必要な入力データの生成、解析結果の可視化、コンテンツ生成を行う研究支援システムを開発している。3次元CADが医療現場で使用されていて活用されている。

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4.学生実験(情報工学)の紹介
寸田裕樹(広島大学 技術センター)
 情報工学実験シラバスの一環で行われている演習(UNIXの基礎知識と利用法、Perlによるテキスト処理、C言語の基礎とプログラミング手法、グラファアルゴリズム、計算機による行列演算、Javaプログラミング演習などに技術職員として参加している。しかし、一人で学生の指導をすることもあるため、それらの勉強をしていると話されていた。質問は「計算機の演習は次々に新しい言語など出てくるが、それらを学ぶ際にセミナーや企業などの勉強会を利用するか」という質問に、「仲間の技術職員と一緒に学習しています」ということでした。ここでは助手がいないため、ほとんどが技術職員にまかされている形になっている。

<ポスター発表>

1.教育研究支援センター技術研修会 ワイヤーカット(放電加工機)を使った加工技術
川村純司(津山工業高等専門学校教育研究支援センター)
ワイヤーカットサンプル
ワイヤーカットサンプル
 高専では技術職員が組織化され、職務の高度化、専門化、資質の向上が求められていて、技術職員を講師として、業務に関わる講習や、演習をおこなうようになった。2日間で放電加工機を使用した講義をおこない、加工させていた。現在東大のPID/PIM 動機付けプロジェクトの一環で切削及び放電による形状創生入門の演習を担当しているので、興味があり、質問した。こちらでは、半日4時間で終了できるように工夫をしているが、2日間もかけるとかなり良い作品ができていた。東大でも学生から「楽しかった」という感想が聞けるが、津山高専でも同じであった。

2.安全衛生巡視における技術職員の役割(技術支援の取り組み)
高濱邦高(神戸大学工学部)
転倒防止金具の提案
転倒防止金具の提案
 神戸大学は神戸地震を経験したこともあり、技術専門員のほとんどが衛生管理者の資格を取得し積極的に安全衛生に取り組んでいる様子を発表していた。又保管庫・書庫・整理棚等の転倒防止策として、大学内の工作室で作ったアルミ二ウムA5000番を適当な大きさに切削して、穴をあけ、ビスでとめられるようにしていた。業者に依頼すると1件2万円かかるところを、数百円のコストで仕上がる。又長さの変更にも対応できるので、場所に応じた対応ができている。

<まとめ>
 全体をみて、優秀な技術専門員がいる所は、演習や講習を全て技術専門員に任せて、教員は最初の授業を担当することで進められている。学生の質問にも技術専門員が答えている例が多く、どこまでが技術でどこまでが授業なのかの区別がつかない。技術職員の職務でないにしても、常に教員と同じぐらい勉強をしていく事が必要だと思う。

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