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今回は第九回企画として、4月に工学部・工学系研究科事務部長に就任された弦本英一事務部長に貴重なお時間を割いていただきました。ご存知のように弦本部長は本学の副理事でもあり、学外での多彩な経歴をお持ちです。その経験に照らし合わせて、学内の者とは異なる視点からのご意見をお聞きできたのではないかと思います。インタビューに関する感想やご質問などございましたら、情報センターまでお願いいたします。
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技術部情報センターと申します、技術部HPを担当していますのでよろしくお願いいたします
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HPといえば、私もベルギーのEU代表部で日本大使館のHPを担当してたんですよ。
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ハード的なところは現地スタッフがやってくれますが、内容に関しては一人です。難しいのは、国としての見解は一つなので、独自にどんどん情報を出すわけにはいかない。そういう点ではあまり面白くなかったかな。日本の文化を紹介するコーナーがあったので、そこに面白そうなリンクをたくさん貼っただけで終わってしまいました。
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外務省です。ほとんどの省庁から出向して来ていて、一旦外務省の職員になって仕事をする。EU代表部というのは国連代表部と似ているけど、国連は日本もその一員。だけどEUでは日本は部外者なんだよね。外部の立場から働きかけをするようなところ。他の大使館だと、日本紹介文化事業とか国費留学生とかあるけど、そういう業務がなくて一風変わっていた。
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豊富なご経歴をお持ちだと思いますが、まず現在の東大での正式な役割をお聞きします
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企画調整役(法人化以前は企画調整官)と総長秘書室長は平成17年度まででしたので、現在は副理事と工学系副研究科長と事務部長を拝命しています。
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経歴は資料に書いてある通りですが、東大法学部を出て文部省に入りました。学歴社会は好きじゃないので、なるべく学歴は言わないようにと思うんだけど、隠すと逆に変に思われたりで難しいね。大学時代はあんまり出来の良い学生ではありませんでした(笑)。
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文部省に入られてからはどのようなお仕事をされて来られたのですか
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文部省に入って、最初のところは暫定配置で官房人事課審査班といって海外渡航の審査などをする部署でした。それは結構面白かった。業務改善があって、学部長とか、役職のある先生方以外の海外渡航手続きは大学で許可して良いことになりました。高等教育関係だと企画課かな。大学行政に関するところで大学審議会というのがありますけど、その中で高等教育計画を作っていました。18才人口がだんだん減ってくるので大学の入学定員どうしようかというあたりを検討していました。そこで大学のことを担当したので、平成5年に秋田県の企画調整課というところで県立大学の設置準備をやりました。当時東大の副学長でもあった鈴木先生が秋田県立大学の学長に就任されることになったので、その時に東大の本部棟、農学部に会いに来ました。まさかその時は自分もここに来るとは思わなかった。
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秋田県立大学では大学の規則を作る様なことを何でもやっていました。とにかく教員集めとコンセプト作りでしたね。学長、学部長、学科長までは内定して、さあ教員を集めるぞというところでまた移動になってしまいました。平成9年は地域政策専門官と書いてあるけど、ここでは国の移転というのがあって、大学も郊外に出しましょうという話がありました。あとから工場等制限法が緩められたりして、あまり良い思い出がないなぁ。
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次の国際企画課は欧州連合(EU)にいくための準備機関です。それまであまり外国に行ったことがなかったから、EU代表部でベルギーにいたときの印象が強烈でした。現地職員は時間通りに来て時間通りに帰る、昼休みはものを頼んじゃいけないし、結構苦労しました。この時にだいぶ老け込んだような気がする(笑)
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平成14年に文部省生涯学習政策局 生涯学習推進課 専修学校教育振興室に戻りました。日本に戻るとチームで仕事をやりますよね。部長だから当然部下がいる。部下の人がだいたい優秀でしょ。そうするとEUでほとんど一人でやっていたのと比べると「やっぱり仕事が進むな」という感じですね。外務省のやり方も確かに良いんだけど、ラインがなくて、スタッフが横並びで仕事をする感じなんですよね。上には大使とか公使とかいるんだけどスタッフは横並び。現地職員も2人に1人とか3人に1人しかいないので、あまり自分のために使えない。だから帰ってきて日本は良いなぁと思いました。
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そうですね、平成15年の7月に東大の企画調整官に任命されました。企画調整官というのは面白いポストでどこの部にも属していない。部の外にあって、組織的には部下もない。ただ現実的には総務部の中にあって企画課と情報課を持っている。厳密に言うと総務部は単に仕事の上でそういう指揮をしているわけで、そういう意味では総務部の総務長というところかな。責任もないけど権限もない、そういう感じでした。東大の企画調整官としては私で7人目かな?大学院重点化をやったり、柏の移転をやったり、その時々でやることが違っている。私の前から情報化を進めていて、私の時に「じゃあ情報化を全部やりましょう」ということになった。その他にも企画調整官には総長特命事項という肩書きがついていて、歴代の企画調整官も総長の特命事項と何かをやる、というような感じだったんですね。私がやってきた時は事務局長が梶野さんで、私の一週間後に上杉さんが来ました。当時の特命事項は法人化が主で、法人化の準備をやっていた。
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私が文部省から調整役で入ってきて東大の職員に感じたのは、みんな良くできるということですね。総長補佐の人たちは先生方だったんですが、そのときに東大の先生ってやっぱりできるなぁと。本当は学問の世界で生きている人なんだけど、行政的な規則とかは、法学部の先生方ならわかると思うけど。他の学部の先生方は素人じゃない?だけど、なんかできるんだよね。先生が下の人に任せているのかも知れないけど。どの学部の人でも総長補佐になる人はよくできる。東大は集団の質が良いのでもっているのかなぁと感じました。秋田県の県庁にいたときもたまたま花形の課なのかも知れないけれどできる人たちだった。本部でも工学系にきても、それぞれの仕事の能力はみんな高いと思う。東大も文科省もそうだけどまじめな人が多いですね。まじめ過ぎるから時々息を抜かないと。上の人はもっと遊ぼうといえるけど、下からは遊ぼうとはいえないから、上から遊ぼうっていってあげないといけません。今、私も努力中です。
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ここに来て「工学系って大きいでしょ?東大も大きいし、工学系ってミニ東大でしょ」とよく言われるけど実はあんまり感じてない。現場というか東大の中を渡り歩いていないからだと思う。本部にいれば東大をあんまり感じなくて、列品館にいれば工学系を感じない。なるべくその大きさを感じるように歩きまわりたいんだよね。物理的に離れているということではなくて、いろんな人がいて、色々なことをしているからそれを見られると良いですよね。どういう人がどういう生き方をしたいのか、何かを変えたいと思っているかも知れない。そういう声をなるべく拾いたいし、拾うための努力をしたい。ここに座っているだけではだめなので、そのPRをするために今回のインタビューは大変ありがたいです。
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国立大学法人の業務改善の必要性が言われていますが、その点に関してご意見をお聞きしたいと思います。
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東大は財源的には苦しくない。交付金は1%とか3%とか削減されるけれど、東大は外部資金を取れるし、病院の財政基盤は危ないといえば危ないという感じだけど、それ以外は他の大学に比べればまだ良い方だと思う。そういう点ではかなり恵まれているので、東大のことだけ考えれば多分大丈夫。国立大学法人全体で考えると、東大が頑張らないと難しいなと思いますね。全部私学にしたらどうかと意見もありますが、教育研究の水準を上げるという視点が大事でしょうね。
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私立大学化に向かうのではなく国立大学法人としてやってゆくべきだということでしょうか
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私立大学だと授業料を上げないといけないし、理科系の研究をやると財政的にかなり苦しくなります。東京大学は何とか総合大学でいけると思うけど、私立にしたら他の大学は文系大学ばかりになってしまう。先生方は地方でもいい先生がいると思いますけど経営的には苦しくなりますから、国民が高等教育に期待することを実現するためには理解してもらうしかない。総合大学として頑張っていただきたいというか、いきたい。
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事務部の業務改善をやろうと思っています。どのようにしたいかというと、同じことをやるにも楽にやりたい。楽にやりたいということは、なくせる仕事はなくしたいということです。ほんとはもうちょっとやるべきことがあって、例えば法人化になってクローズアップされているけど、環境安全はもっとやらなきゃいけない。あるいはHPだって、もっとやらなきゃいけないんだけどやれていない。それをやるための時間と労力を生み出すためには、今やっている業務を減らさないといけない。例えば東大はちょっと弱いんだけど、学生の就職の相談とかカウンセラー的なものとかを今よりきめ細かくできるようになる。紙の書類を処理するだけが教務じゃないと思うんだよね。履修や就職の相談相手をしたり、悩んでいる学生にアドバイスをするというのが本当の教務だと思うんだよね。財務だって、伝票の処理だけではなくて、どうしたらお金がいっぱいはいってくるか、どうしたら安く買えるか、そういうのを考えて計画・配分する、ということができるようになれば良い。本来的に考えなきゃいけない事業がいっぱいあるのに、日常的な仕事に没頭せざるを得ない。日常的な仕事を集約し改革することによって、もっと効果の大きいところに力を注げるようになる。そうすることによって大学全体のクオリティーや評価も上げることができます。
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環境の方は安全衛生管理室や技術部がやってくれて結構うまくいっているし、適任の先生もいらっしゃる。先生の役割を技術職員とか事務職員とか、今いる人たちで担えるようになれればベスト。そのためには今やっている仕事を整理して個人の能力も向上しないといけない。業務改善もあるし、研修などの能力向上もある。技術部は研修の仕組みがあるのでその点はいいと思う。事務職員は研修の仕組みはあるけど、係長研修とか課長級研修とかジェネラルな研修なのね。学務の研修とかもあるけど、もうちょっと特化したものがあればいいと思う。どんどん研修に出してあげたいんだけど、そのためにも今の仕事を楽にしてあげないと、研修も出せないし休暇もとれない。総合的にいろんなことをやらないと業務改善にもならないし楽しい職場にならない。
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中にいるとこれまでのやり方があって身動きが取れないところがあります。外からの視点が必要ですね。
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新しいことやろうというのは抵抗があると思うし、今までで方法でやれるんだったら変えたくないですね。誰かがはじめないと誰も変わらないからね。その点では外から人がやってきて「こうしてみたら、ああしてみたら?」という提案で刺激をすることはとても良いことだと思うので、その役目を私が出来ればと思っています。
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平成17年あたりからは業務改善が試行されています。マッキンゼーの報告書には高邁なものじゃなくて、実行可能な改善を書いてもらった。コンサルタントと東大でチームを作ってやったんだけど、彼らがすごいなと思うのは我々が言葉にしたところをきちんとまとめて「こういう解決方法ではどうですか?」「こういうアイディアはどうですか?」と提案を出してくれることですね。それに対して、ケチを付けるのはすぐできるじゃない?(笑)そうするとまた一日で違う案を出してくれる。昼間はインタビューとか調査をして、持って帰って夜中にプレゼンの資料を作ってくれたらしい。それだけのマンパワーをかけるには本業が他にあってはできません。それが可能な体制を作った上で、きちんとやってくれる人たちのマンパワーをうまく発揮してもらえるかどうかは発注者の能力にもかかっています。
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法人化しましたので規則などを変えることで随分簡素化できると思いますが
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部局で検討していただいても、部局ごとに規則が大きく違ってくることは実際はあまりない。本部が統一的に変えてくれた方がトータルでは改善される。業務量からすると本部の規則や取扱いを変えることで一番が改善されるのは部局になる。ただ部局から変えてもらいたいところを具体的に言ってあげないと、本部も変わってくれないというところはあると思うので、私も今は部局の立場でその役目をやっています。
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副理事と事務部長の役割を兼ねていて困ることはありませんか
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本部では副理事、部局では事務部長という立場はあるんですけどバッティングするということはないですね。相反するときは部局を優先します。そうでないと「本部からやって来て」という感じに思われるのはイヤなので、なるべく物理的にもこっち側の席にいっぱい座って、部局の人間という風にやろうと思っています。だんだん落ち着いたら本部の方に出かけていってと思っています。こっちをやりきれないうちに終わってしまうんじゃないかという不安があるんですね(苦笑)。
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やりかたを変えたら良くなることは東大の中にたくさんあると思いますね
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ほんとは何か買うのに買って伝票出したらそれで終わりなんだけど、今だとどの費目で使うかを考えて、製品選ぶときも考えて、支出項目で分けたり、これ買って良いかどうかも考えて、伝票を打ち込むことも必要だし、場合によってはお小遣い帳じゃないけど研究室と二重に管理を行っているところもある。大変だとは思う。
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ルーズになるのはまずいのですが、法人化したわけですから手間を省けるところは省きたいですね
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みんなそう思っているんだよね。システム化すればいいというのはわかっているけどシステム入れても現実的にどうなるかというと電子化はされるんだけど、打ち込み作業は変わらない。場合によっては、二重作業がおこる。システムを入れてもただ単に紙でいっていたのが電子でいくだけで早くはなるかも知れないけど、手間としては全く同じことが起きている。システム化をいろいろやりたいけれど、その前に本当は手順を変えて、簡素な手順にしておいて電子化する、というのが正解だと思う。紙の上での簡素化がなかなか進まないのでじれて、電子化の方からやる。それが今の状態。市販ソフトがあったとして、市販ソフトにやり方をあわせる。カスタマイズはしないというのが、理想ですね。特別会計とか国のお金を入れている機関は結構あって、ソフト的には似たようなのができるはずなんだけど、どこの大学もカスタマイズしちゃうしね。
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実験でもそうですが、新しい手法を導入すると一時的に手間が増える。でも方針が正しければ良い結果を出せるようになる。変える決断と変更に馴染むまでが大変なんですよね
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変わらないといいつつ、変わってはきているんだよね。最も法人化から制度変わってるんだけど、経理だって、やっているシステムは10年前と比べればだいぶ変わっている。新しいシステムを導入すると仕事は増えますよね、でもそれを乗り越えると楽になる。いったん業務量が増えるんで乗り越える人は大変だし乗り越える時期にいる人は大変なので、みんな乗り越えないでずーっとこういう(停滞)状態にいる。下にいる人は上が何とかしないからと思っているし、上にいる人は下ができないから自分がやらなきゃいけないとか、言い訳を言ったり嘆きあってる。みんなまじめだから余計そうなりがちなんです。
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短いスパンで仕事が変わられていますが、新しい職務に馴染むだけでも大変だと思います。何かうまくできる秘訣とかあるのでしょうか?
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秘訣と言っても始動は遅いですよ、今も遅いと思っていますし。本当は1ヶ月とか3ヶ月とか、準備期間がほしい。ポストによっては一週間、短いのは二日くらいで立ち上がったりしましたね。よくあるのは異動先ですぐ出張とか、挨拶、講演とか、そういうパターンは良くあるんですよね。
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だけどここでいえば課長達がしっかりしているので困らないと思うんだよね。それに事務部長がいないと回らない組織ではないと思うんですよ。どこの組織も人は大事なんだけど、かといってその人が抜けたら組織が崩壊するかというとそんなことは有り得ない。だからほんとは気軽に休んで欲しいんだけど。演習や実験や授業があって、技術職員の人が担当しなきゃいけないというんだったら休めないね。
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話はそれますが、有給休暇の取得の促進は大事だと思いますが、職場の兼ね合いと、勤務成績に反映されるという噂があって取りにくい状況があります
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勤務成績の評価はないんじゃない?私はそういう目では見てないし、有給は普通に取って下さい。ただ、みなさん取れてないと思う。どうしても万一の病気に備えたりするじゃない?今は夏休み期間中だから割と取れると思うけど、文部省にいたときも周りはあまり取れていない。本来的には年休を取ってその人がいなくても仕事が回るような体制にしておかなければならない。そうしないとおちおち病気にもなれない。だから理想としてはみなさんが年休を消化して、なおかつ仕事が回るような仕組み作りをしなければならない。そのためにも技術部が軌道に乗ると良いですね。
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話を戻しますが、周りの職員が良くやってくれることが異動を可能にしていると
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そうです、ですから東大の人はできるなと思いましたよ。工学系の人もできるなと思うし、みんなまじめだと思うので、何とか、もうちょっと楽しくやりたいなと。いやみんな楽しいんだとは思うんだけど、職場が楽しければ一番良いじゃない。だから楽しく仕事ができないかなと。いろいろ仕掛けたいんだけど、上から仕掛けられるのってイヤでしょう。それでどうしようかと考えているところです。
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そのような大枠を上から投げていただいて、それに対するアイディアを採用していただけるようなシステムができれば大変ありがたいですね
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よろず箱にはどのくらい投書が集まったのでしょうか。
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まだ数件かな。文書では来ていません。今の所メールしか来ていない。来た中で、良い提案は載せてあげたい、アクションしたいと思うのですが、本人に了解を取ってからという約束なので、まだ動いていません。有用な意見もあります。
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事務部長のお考えが直接職員に伝わるシステムがあれば良いですね
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そう思って部屋のドアも開けて誰でも入っていいようにしているんだけど。なかなか入ってくる人はいないんだよね。お菓子でも置かなきゃいけないか、アロマテラピーみたいな香りとか付けたらいいか、とか頭をひねっているんだけど、どうすればみんな来てくれるかというのが悩みです。(と書いたてもらったら、来てくれるかな?)私がここにいても誰も来ないので、この前ラウンジオフィスというのを提案しました。情報理工の武市先生も賛成してくれて「やりましょう」と。研究科長も専攻長以外の助教授とか助手、講師とか若い先生とお話しする機会は少ないと思うので、松本先生にもお話ししたら「そういう機会があれば」と言って賛成で、技術部長の影山先生も賛成、みんなでやりましょうと決まりました。それでこの前やったんですけどね。残念ながらお客さんが来なかった。
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錚々たる顔ぶれなので気後れしたのかもしれませんね。何回か開催して、楽しい雰囲気を醸しだしていただければ徐々に集まるのではないでしょうか。異動は多くなりましたが、反対に職員間の交流が減っているので貴重なこころみだと思います、是非頑張ってください
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ほんとは私もどんどんしゃべれば良いんでしょうけど、そういうタイプではないんです。こうやってインタビューならできるけど、普通の談話とかが苦手なタイプなので難しいんですよね。事務室にBGMとか、かけられないかな。
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これまで技術職員との関わりや感想などがありましたらお聞きしたいと思います
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技術職員との関わりは、東大に来る以前は特になかったですね。大学審議会で話し合いがあったけど技術職員の話はなかった。東大に来てから、上杉プランとか技術職員のあり方とかありましたが、私はまだ入っていないので、逆に言えば工学系に来てからですね。たまたま技術部調整室の発足前で、その時から小林前事務部長が入っていて、本当はメンバーではないにも関わらずそこから参加させていただきました。調整室の人たちはみんな熱心だし、何とかしようという熱意も感じる。総会なんかも、白熱して議事が進まないかな?という感じもあるけど、それはそれでみんなの意見だからいいと思うし。そんなにあわてる話ではないと思うので、良いんじゃないでしょうか。最終的に技術部が高いレベルに発展することを願っています。
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技術部に期待する将来像や問題点などについてお聞きします。外部からの視点でご意見をお聞きできればと思います
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大学全体としては東大が変えようといわないと変わりにくいというところがあると思います。文部省にしても動きづらいと思うんですよね。その点東大の責務は大変だと思います。技術部だって東大が成功したとなると、他の大学も「そういうやり方があるんだ」ということが大きいと思うんですよね。技術部は確かに東大の、あるいは工学系の中の話なんだけど、全国の大学に波及するという意味では影響は大きい。
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技術部に関しては残念ながら東大はトップランナーではありません。ただ、東大が公式に取り組むということに大きな意義があると思います。
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小さい大学だと難しい面があると思いますが、工学系では技術部の下に多くの部門ができるわけでしょ。集まれば大規模な技術部ができると思うし、工学系以外にももちろん技術職員がいるわけだから、もしかしたら東大全体で技術部ができるかも知れない。工学系の技術は生研に行ったって役立つと思うので、将来的にはうまく回ると思う。技術部という型がなければ回らないというわけではないとは思うけど、技術部という型で回った方が昇進という面でもいいと思います。情報理工が入っていないのが、不思議なんだけど。
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先日つくばの高エネ研(KEK)でもお話を伺って来ましたが「技術部にはある程度の規模が必要である、組織化しても規模が小さいのであれば、大学単位ではなく地域でまとまることも考えてはどうか」という意見もいただきました。我々は工学系でまとまれれば取りあえず規模的には大丈夫だと思いますが、全体を見るといろいろなことを考える必要がありそうです
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大学間異動って技術職員はないよね?異動することも将来は可能かな?昔の事務官は大学から出ることもあったけど。場合によっては地域で共通の技術部を持つことも現実味を帯びて来るんじゃないかな?
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異動に関しては技術部がきちんと運用できればという話で、これまでのような立場だと難しいですね
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専攻が必要としていた人を採用してきたわけだから、今はなるべく研究科で役立つ人を採って下さい、ということでだんだん垣根が低くなって来ていますよね。
技術部の運用ということで言えば、評価の試行が始まるので技術職員の人にも職員調書を書いて欲しいんですよね。希望はかなえられないと思う人が多いと思うけど、きちっと自分の希望を表明して欲しい。事務職員には以前から書いてもらっています。希望を言わないと技術職員もマッチングにのってこない。事務職員を例にすれば、本部の人事は職員調書でこの人はこういう希望があるということをはじめて知る訳で、職員調書には自分のやりたいことを書いて欲しい。それがみなさんのこれからの道を切り開くことにもなる。人事部だって、私だって、人事やっている人は適材適所を考えて、なるべく希望は叶えたいと思っている。やりたくないことをやらせるのは無理なのだから、そこを書いて欲しい。異動の時に必ず希望がかなうわけじゃないけど、希望は出しておいて欲しい。「特にありません、今のままでかまいません」では叶うはずの希望も叶わない。
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一人一人がどういう希望と能力を持っているのかを表明するのは技術部の第一歩だと思いますね。もうひとつ大事なのは、大学側も技術職員に何を求めていて、将来にわたってこういう仕事を担当して欲しいということを表明することです。
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情報とかは割と共通だから、工学系だけということではなくて部局でも役に立つと思うので、まとめやすいと思うし、技術職員の中である程度まとまりのある部門ができそうな専門分野だと思う。そこはそういうところで組織化してその中で回っていけるように、考えていきたいと思うのですが。
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環境とか情報に関しては見えてきているのですが、個々の職場でやっている業務範囲が非常に曖昧で場当たり的なので困っています。
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原子力は原研機構とか関係機関があるからその辺で組むこともできる。専門分野ごとだと目鼻がつきやすい。
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専門分野別の切り分けもありますが、問題は講座所属の技術職員で、個々の講座ごとに大きな(仕事の)差違がある。仕事が違っていても今までは講座の先生に最後まで面倒を見ていただけたが、人事の流動化等で最後まで面倒を見られないという例が多くなってきた。専門分野と人間的なつながりの中で仕事をやってきた人がどうなるのかという不安があります
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ジョブマッチングは専攻の方針を尊重しているので、専攻が了解してくれれば動く。逆に言えば、この人はここの専攻や研究室で生きるよりは他の部門で生きる方がいいと思ってくれればいいわけだよね。それは専攻長なり指導教官が、どっちが本当の幸せか。自分の利害から離れて、技術職員としてどっちが大切かを考えてあげればいいんだと思う。研究室の利害はもちろんあるんだけど、本人のことを考えて異動させるとかね。
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もっと言えば技術職員は大学の中でどのポジションを受け持って何を目指すべきなのか、将来像が明確ではないことが問題です
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事務部の中に事務職員も技術職員もいて、専攻に張り付いていた。そういう体制だったよね。概念的には事務長の傘下にいたんだと思うんだけど実際には専攻長の傘下だった。今は技術部ができたので、概念的には技術部の傘下に入ったんだけど、実際には専攻に張り付いているという状態ですね。専攻で上の先生が変わったら、技術職員はそのままいけるかもしれないし専門知識を学び直すかもしれない。でも専攻や先生は他の専門能力を持っている人を学内や外部から連れてきたいと思うかも知れない。今は専攻の仕切りが強いんだけどだんだんこの仕切りが弱くなってゆくと思う。技術部が今は工学系などの部局ごとの型かも知れないけれど、最終的には大学の型に入るのがいいと思う。技術部が発展していけば他の部局も巻き込んで大学の技術部という型ができるだろうと思う。図書なんかもそうだよね。工学系・情報理工学系で仕切りになってはいるけど、最終的には総合図書館に所属している。技術部もそういう感じになれればいいかなと思う。
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もうひとつ心配なのは「技術職員はいらない」と言われて減らされてしまうことです。将来はなくす方向で動いているのではないかと心配している技術職員もいます
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技術職員も能力向上を目指さないと、それは事務職員も同じで「人数だけいてもしょうがないや」と言われることになってはいけない。
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技術職員の果たすべき業務を決めていただいて「将来はこういう形で運営したい」という大学の方針があれば、それに向けて努力してゆくことが可能になると思います
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情報とか環境とか、そういうところをとっかかりに学内的に入れてゆくのでしょうか?助手との関係が難しいと思うんです。今度助手制度が変わるので、現在の助手制度の整理をしないといけないと思います。基本的に新助手というのはこれからはそんなに採らないので、採るんだったら技術職員で採るという形。助手を採っていたのは待遇改善という意味もあったんですよね。それを技術部として技術職員の中で待遇改善ができるような仕組みができれば、新助手を採らないようにすることができる。技術職員がどこまで行けるかというので、助手(特に新助手)との境目がなくせるようになればいいんですよね。
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助手問題は非常に微妙な問題です。技術職員は教育と研究に貢献しているのだから、助手に転換するというのも一つの考え方だと思いますが。
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東大からすると、助手というのは本来は助教授、教授にあがっていく人を採っているので「事務的な助手は採っていない」というのが建前だと思う。新助手は違うけど、助教は準教授、教授とあがっていく。今は教育の評価というのはあんまりできていなくて、研究で評価される。教育的なところをもう少し評価できるような指標ができると良い。「東大で学んだ学生は安全管理がしっかりできる」とかね。学生の怪我や事故が多い研究室とか、そういうのも指標になるかな?
今の助手制度の変更は来年に迫っているので、助教・新助手の話に終始する。技術職員がどうするかとかは次のステップだと思うんだけど、新助手をなるべく採らないようにして、大学が必要としている技術的なものは技術職員で担えるように、それも待遇が良くなって担えるようにすれば、新助手は将来いなくなるだろうし、助教の人は何年かのうちに准教授になるというそういうルールなんだよね。
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その方針でゆくならば、現在でも問題になっている不備を解決しなければなりません。それは技術職員が教育職でないため教育業務を担当しても、建前上それはありえず、当然評価の対象にもならない点です。そこをきちんと評価するような制度にしていただきたい
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技術職員の評価項目の面で教育的な評価を入れるのは可能だと思うし、割と簡単だよね。技術職員で研究成果の評価をやるとなると、論文を書かなきゃいけないことになってしまう。それよりは実験・実習で学生にきちっと教えるというところを評価しないと。逆に研究評価ばかりだと変だよね。研究で評価するとなると、教授から技術職員までみんなが研究室にこもって研究しているわけね。現実にはものさしがうまくいってなくて、休んでいるという事実は評価の対象にはなるけど、いい人はどうすればいいかというところで評価はうまくいっていない。昇進とか昇格とか昇級とかいうときに、まだ昔の慣性で回っていると思う。そこにみんなが納得しやすい、その基準に基づいて評価できるものさしが欲しい。全員が納得するのはなかなか難しいかもしれないけど、大抵の人がうんと言ってくれる?文句を言われない、というところまでいければ良いね。
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技術部を発展させて下さい。情報理工系の人はとりあえず様子見でもいいから、工学系の技術部がうまくいったら自分たちも考えてください。少しずつかも知れないけれど回りだしているので、それでうまくいくと思います。期待しています。
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仕事はとても忙しいと思いますが、息抜きはどうされていますか
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子供がいるので、休日は家族と子供とどこかで遊んでます。夜はだいたい遅くなりがちなんですけど、子供には良くないので、できるだけ早く、なるべく夕飯を家で食べることができるようにしています。皆さんもそうだと思うんだけど、早く帰れるようにしたいね。今は事務部長室にいるのでいつまでもいられる。大勢でいると上司が早く帰らないと帰れないという下からの圧力があるんだけど、ここはそういう圧力がないからなかなか帰らない。
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あまり見られませんが、技術部会に出られなかった時にHPでチェックしています。技術部が立ち上がりつつあるところなので、そこの動きをHPで確認できるのでいいと思います。技術部じゃないので、部会の案内が来ないんです。HPでいつあるってチェックしています。あと、研修情報を掲載して下さい。研修の公募はなるべくいろんなルートを使いたい。専攻長会議で伝えたものが教室会議に伝わらなかったり、専攻事務に伝わらなかったりする。そうすると当然研究室に伝わらない。どうすればいいのか、と思っています。たくさんルートを作ってどれかに引っかかってくれれば、と思います。技術職員はいいけど、事務職員はそういうルートが複数ないからね。誰がどこにいるかという情報が列品館にきちんと来ない。採用の情報も、採用したあとしばらく経ってから通知が来たりする。何とかしないといけないと思うんだけど。
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インタビュアー感想
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- 今回はこれまでのインタビューの中で一番緊張感を持って臨みました。しかしお話を聞いているうちに緊張がほぐれ、話題に集中してゆくことができたのは、弦本部長のお人柄だと思います。一見とっつきにくそうな感じ(失礼!)なのですが、実は合理的な判断で適切なアドバイスをいただける、仕事のできる優しい上司というイメージがインタビューの感想でした。弦本事務部長の在籍中が、工学系や東大がいろいろな意味でトライするチャンスかもしれないと感じました。
- 「部下を思いやる気持ち」,「仕事に対しての厳しさ」,「遊び心おう盛」・・・失礼ですが,そんな印象を受けました。よろず箱の設置,事務部長室の開放,ラウンジオフィスの提案など,これまでにはなかった職員との交流,意見収集のスタイルは今後もぜひ続けていっていただきたいと思います。
- 比喩ではなく,実際に部屋の扉を開けていらっしゃるという御姿勢に,全てが表れていると感じました.ご意見のある方,お茶を飲みながらお話をなさりたい方(?)は事務部長室を訪れてみてはいかがでしょうか。
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2006年8月17日 事務部長室にて収録 |
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インタビューアー 山内, 小林, 畠山 |
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